いつの頃からか俺は監獄の中にいた。
自分がいつからここにいるのか、なぜここに入れられたのかは覚えていない。正確に言えば、そんなことは忘れてしまった。
わかっているのは、俺はここで死ぬ時を待っているという事だけだ。
ある日、俺に面会者が訪れた。
監視以外の人間が俺に会いに来るのは初めての事だ。
面会者は白いスーツに身を包み、この場にはそぐわない人間だった。
そいつは俺を一瞥すると、唐突に
「君、この牢屋から出たいですか?」
と尋ねてきた。
俺は相手にしなかった。
別にそいつに限った事ではない。監視の奴が何を言っても俺は応じた事がないのだ。
「ここから出たくないの?」
再び尋ねてくる。
俺がなおも関心を示さないのを見て、そいつは言葉を続けた。
「まだ死にたくないですよね?僕はね、君をここから出してあげに来たんですよ。」
―君をここから出してあげに来た―
最後の言葉を聞いて、俺は反射的に顔を上げた。
「おや、やっと反応しましたね」
「・・・・・・・」
「僕なら君をここから出してあげる事ができますよ」
俺が感心を示したと思ったのか、そいつは悠然と言い放つ。
俺はため息をつき、
「からかいにきたんなら他の奴にしな」
と、言うなり視線をはずした。
「からかう?」
そいつは怪訝そうな顔で問い返す。
「君は面白い事を言いますね。そんなつもりはありませんよ。僕は嘘はつきません。ほら、見てください」
俺はそいつが手に持っていたたくさんの鍵がついたわっかを見せられた。それを目の前でジャラジャラと振る。
「鍵だって持ってるんですよ」
そう言うと、わっかに付いているたくさんの鍵の中からひとつを選び出した。
「これが君の牢屋の鍵です。君が出たいと言うのならすぐに出して上げますよ」
何のつもりで俺にこんな事を言うんだろうか。
俺はこんな話をハナから信じていない。世の中に上手い話なんて転がって
るはずがないのだ。
そう思うのに、俺はそいつを本気で追い払おうとしないのはなぜなんだ・・・
「・・・・・・・・・・条件は?」
気がつくと俺は口を開いていた。
「はい?」
「・・・・・条件はって聞いてんだよ。ただで出してくれるわけじゃねえだろ」
「君は話のわかる人ですね」
そいつは口元だけで笑った。
「それなら話は早いです。君にはMSのパイロットになってもらいたいんですよ」
「MSのパイロット?」
全く予想もしていなかった答えにさすがの俺も驚きを隠せなかった。
「おや?意外な顔をしていますね。僕が君に腹黒い事でもさせると思っていたんですか?」
そいつは面白そうに俺を見る。
「まあいいです。君もここに入って随分たつでしょうけど、いま地球とプラントの間で戦争が起こっている事くらいは知ってますよね」
「・・・ああ」
以前、監視の奴らが話していたのを聞いたことがあった。
「あいつらは事もあろうに、地球軍のMS5機のうち4機を奪取したんです。まあ、そんなものはいつでも造れるからいいんですけどね。
でも、その分はきっちりと報復しなければならない。その為に、いま新しいMSを開発中なのです。君にはそのMSのパイロットになってもらいたいんですよ」
さっきまでの余裕のある態度とはうって変わって、そいつは少し興奮ぎみに語った。
何かよっぽどの屈辱を受けたんだろう。
見るからにプライドの塊のような奴だからな。
俺がしばらく黙っていると、
「ああ、そんなに心配しなくても大丈夫ですよ。MSに乗った事がなくても、ちゃんと訓練をしますからね」
とそいつが付け加えた。
MSのパイロットになるという事は、戦場での死を意味する。
結局、ここから出られたとしても死ぬ運命にあるという事か。
そんな考えが頭をよぎった瞬間、俺は自分自信に呆れてしまった。
俺にもまだそんな気持ちが残っていたのか・・・。
「どうですか?君にとってはいい話だと思いますよ。ここで死ぬ時を待ってるよりは良くないですか?訓練の時以外は君は自由になれるんですよ。しっかり訓練を受けていれば、実戦で死ぬ可能性も低くなります。君の頑張り次第では、生き延びられるかもしれませんよ?」
確かに、そいつの言う通りかもしれない。ここで死ぬ時を待っているよりはいい条件だ。死は免れなくてもここ出られる。
―外の世界に出られる―
それだけで十分だった。
「・・・MSのパイロットになるなら本当にここから出られるんだな」
俺はそいつに確認するようにつぶやいた。
「はい。今すぐに出してあげますよ」
わっかの中から選び取った俺の牢屋の鍵を目の前に持ち上げる。
「訓練の時以外は、自由なんだな」
「はい、施設内から出なければ何をしても構いません」
それを聞いて、俺はゆっくりと目を閉じた。
少し間をおいてから、ポツリと答える。
「・・・・・・・やるよ」
「そう言ってくれると思ってました」
目を開くと、満足そうなそいつの顔が映った。
こうして、俺は再び外の世界に出ることができた。
久しぶりに踏みしめた外の大地は、俺に生きているという実感を与えたくれた。
やっと完成しました!! SEED夢小説のオルガ編。
・・・・・とは言っても、今回は序章という事でヒロイン全く出てきてませんが(←おい!)
後編はめちゃくちゃ短いですケド、
一回だけヒロインの名前が出てきます。まぁ、名前だけなんですが(笑)その次から、ヒロインの登場です。
この話は、あるサイトで、オルガ・クロト・シャニの3人が元死刑囚だったという噂を聞いて思いつきました。
でも、10代で死刑囚って一体どんな事をやらかしたんでしょうかね?おそらく殺人に違いないでしょうが。
SEEDの世界では、10代でも車に乗れたり軍に入れることから、成人年齢が15歳くらいなんじゃないかと思います。それなら、オルガ達
が少年院じゃなくて刑務所に入れられるのも納得いきませんか?
原稿を書いてから、何度も書き直したわりにはあんまりたいした事ないかも・・・汗。こんな拙い文章でも
楽しんで読んでいただけたら幸いです。
読んでくださった方、本当にありがとうございます!