※この話は、イザーク夢の男装主人公の設定に沿っています。
主人公が男装している事は、この時点ではイザークもまだ知りません。
アカデミー男子寮での夕食後。
先に部屋に戻ったイザーク以外のメンバーが
食堂で雑談していると、不意にディアッカが口を開いた。
「そういえば、明日ってイザークの誕生日じゃねぇ?」
「へぇ、そうなんですか」
誰ともなしに問いかけられた言葉に、ちょうどディアッカの前に座っていた二コルが答えた。
「明日って8日だよな」
「ええ、そうですね」
「ふーん、だからイザークの奴今日はそわそわしてたのか」
二人のやり取りにラスティが面白そうに口を挟んできた。
「確かに今日のシュミレーションの結果はいつものイザークらしくなかったな」
アスランもふと思い出したように呟く。
「あのイザークが誕生日くらいでか? けどあいつ
明日の休みは出かけるってっ言ってたから、それと関係あるんじゃない」
「マジで!? まさかイザークの奴、彼女でも出来たのか?」
ラスティがこれ以上にないくらい大げさに驚いた。
誕生日の前日にそわそわしていたからといって、どうして彼女が出来た事になるんだろう
かと先程から黙っていたは釈然としない思いでいた。
仮にイザークに彼女がいたとしても、誕生日の前日にそわそわするなんてことは絶対にありえないだろう
。
そんな彼はには想像も付かなかった。
「んなわけないだろ。家に帰るんだとさ」
「なんだ・・まっ、あのイザークだしな。にしても、誕生日に一人で家に帰るなんて寂しい奴だなぁ」
ディアッカの返答を予想していたらしいものの、いまいち面白くなさそうにラスティは気の抜けた声を出した。
「自宅で誕生日祝いをするんですかね」
二コルの問いに、ディアッカは大きく頷いた。
「だろうな。イザークのお袋って息子を溺愛してるからなぁ」
「イザークのお母さんって、エザリア評議員の事?」
はTVで何度か見た、イザークと同じ髪の色をした綺麗な女性を思い出した。
「そうそう。きっとすげえプレゼントが用意されてると思うぜ」
そんなディアッカの言葉を聞きながら、は急にある考えを思いついた。
「なぁ、せっかくだし俺たちもイザークに何かプレゼントしないか?」
「プレゼント!?」
全く予期していなかったの発言に全員が呆気に取られてしまった。
「ああ。こうやってイザークの誕生日を知ったわけだしさ」
「けど、何をプレゼントするんだ? イザークの欲しいものなんて、俺知らないぜ」
ラスティはあまり気乗りしない様子でに問い返す。
「ケーキはどうかな。やっぱり誕生日って言ったらケーキだろ?」
「ケーキは家で食べるんじゃないか?」
アスランがもっともな事を言った。
誕生日に家に帰るのならば、当然誕生日ケーキは用意されているだろう。
「だから市販のケーキとは別に、手作りケーキをプレゼントしようぜ」
「手作りケーキ!? 野郎5人でケーキ作りするのか!?」
ラスティの言葉に、一瞬全員が黙り込んでしまった。
自分で言った事だが、確かに男5人(正確には、男4人だが)でケーキを作っている姿は異様な光景かもしれないとは思った。
他のメンバーも同じ事を考えていたのだろう。皆一様に微妙な表情をしていた。
そんな中、二コルだけがの意見に同意を示した。
「僕はの案はいいと思いますよ。誕生日ケーキはいくつ貰っても嬉しいものですからね。手作りなら
なおさらですよ」
「まぁ・・皆がそれでいいなら俺は別に構わないけど」
二コルの要望もあって、ディアッカは諦めたように呟いた。
ラスティもそれに同意する。
アスランも、
「俺も特に反対はない。ただ、ケーキの作り方は知らないぞ」と賛成してくれた。
「あぁ、それなら心配ないよ。俺何度か作った事があるから」
サラッと言い放つに、ラスティがすかさず突っ込んだ。
「はぁ? マジで!? 女の子じゃあるまいし」
「あ・・いや、その・・・作ったっていうか、母さんに手伝わされただけなんだけど・・」
一瞬ヒヤッとしてしまった。
ケーキなどのお菓子作りはよくやっていたので、つい女である自分の経験をそのまま話してしまった。
最近アカデミーの生活に慣れてきたせいもあって、時々素に戻ってしまう事がある。
気を引き締めないとなとは自分自身に強く言い聞かせた。
「僕も手伝った事があるんで、少しなら作り方はわかりますよ」
と二コルが言ってくれた。
「じゃあプレゼントはケーキで決まりだな。明日イザークが出かけたら作り始めようぜ」
ディアッカが話をまとめかけた時、ラスティが何かを企んでいるような表情で口を開いた。
「なぁ、ただの手作りケーキじゃ面白くねーよな? なんかこうイザークをあっと言わせるような
ケーキにしたくねぇ?」
「具体的にはどうするんだ?」
アスランが聞き返す。
「ケーキの中に何か仕込んでおくとかさ」
「ふーん、それ面白そうじゃん」
ディアッカがここぞとばかりにラスティに便乗する。
「何を仕込むんだ?」
とが尋ねた。
「そうだな。例えば、わさびとか唐辛子とか・・あっそうだ! 生クリームに唐辛子を混ぜるとかどうだ?
デコレーション用だと色でばれるから、スポンジに挟むクリームだけに混ぜるとか」
「確かに間に入れるクリームが赤色でも、苺ジャムと勘違いしてくれそうですよね」
ラスティの考えに、二コルも乗ってきたようだ。
「それいいね〜。んでさ、紅茶には砂糖の代わりに塩入れとくとかしたらもっと面白くなるんじゃない」
「ディアッカ、ナイスアイデア!! ケーキが辛くて、つい置いてある紅茶を飲んだら・・・。フフッ、これは見ものだぜ〜」
ラスティとディアッカは明日が楽しみで仕方がないという感じで盛り上がっている。
そんな感じで話はトントン拍子に決まった。
午前中にと二コルが材料を買出しに行き、イザークが出かけた
ところで食堂を借りてケーキを作ることにした。
「そんじゃイザークも出かけたことだし、始めようぜ。、最初はどうするんだ?」
ディアッカは、初っ端からかなり意気込んでいた。
「まずはスポンジを作るんだ。俺が材料を計り終えたら、ディアッカは卵と砂糖をボウルに入れて泡だて器でかき混ぜて
くれないか」
「OK」
が自動はかり器で一つずつ材料量っていると、ふいにアスランに声を掛けられた。
「砂糖はこんなに少なくてもいいのか?」
「ああ。イザークは甘いものがあまり好きじゃないみたいだから、控えめにしようと思ってね」
「なら塩を入れればいいんじゃないのか?」
「いや・・アスラン、そういう問題じゃ・・・」
「どうせ唐辛子クリームでケーキの味なんかわかんなくなるんだから、そんな事気にしなくてもいいんじゃねーの?」
と、横からラスティが口を出す。
「そうだけど・・まぁ一応な」
こんな調子で大丈夫だろうかとは内心不安になってきた。
すべての材料を量り終えると、それぞれがの指示に従って作業に取りかかった。
と二コル以外はケーキ作りに関しては初心者である。
指示するはかなり大変だったが、なんとかスポンジと生クリームは作ることができた。
「おぉ〜! 上手く焼けてんじゃん!!」
スポンジの芳ばしい香りと綺麗な焼け具合に、ラスティが感嘆の声をあげた。
「早くデコレーションしようぜ」
とディアッカが急かす。
「そうだな。ここからが本番だぜ〜」
ディアッカ同様、ラスティもやけに張り切っていた。
はアスランに泡立ててもらった生クリームの入ったボウルを冷蔵庫から取り出して、
そのクリームの半分をもう一方のボウルに移した。
「じゃあ、ディアッカとラスティはこっちのボウルに唐辛子の粉末を入れて混ぜてくれ」
「任せておけって!」
から奪い取るようにしてボウルを受け取ると、嬉々として生クリームに唐辛子の粉末を入れていくラスティ。
それをかき混ぜているディアッカも非常に楽しそうだ。
だんだん真紅色に染まっていく生クリームを見て、は少しだけイザークを気の毒に思った。
二つに切ったスポンジケーキの間に唐辛子入りの真っ赤なクリームを挟み、表面を普通の生クリームでデコレーションしていく。
の腕は実に見事だった。
見た目は市販のケーキとほとんど変わらないだろう。
最後にチョコレートプレートにメッセージを書いて、やっとケーキが出来上がった。
「はぁ〜、やっと出来たな。にしてもすげえよ! どっからどう見ても普通のケーキにしか見えないぜ」
「そうだな。生クリームのデコレーションは手作りだとは思えないくらいだ」
のデコレーション技術のすごさに、ラスティに続きアスランも思わずため息を漏らした。
「お前女に生まれたほうがよかったんじゃねーの? 外見も女っ」
「ディアッカ・・・死にたいのか?」
そう言って、電動泡だて器のスイッチをオンにした状態でディアッカに向ける。
たびたびこんな風にからかってくるディアッカに、は脅しをかけるようにしている。
本当に女であるにとって、冗談で済ますわけにはいかないのだ。
「あ・・いや、料理できる男ってカッコいいよなぁ〜」
と話を逸らしたディアッカに、強い口調で二コルが言った。
「そうですよ。今は男も家事をする時代です」
「まぁまぁ。さーて、あとはイザークが帰ってくるのを待つだけだな」
時計に目を遣りながら、ラスティが楽しそうに笑った。
イザークは夕食前に帰ってきた。
食事の時に、さり気なく8時頃二コルとの部屋に来て欲しいとだけ伝えた。
イザーク以外のメンバーは、先に部屋に集まって準備をした。
ケーキに立てたろうそくに火を点けると、部屋の明かりを消して、
ドアの両側でクラッカーを持って待機する。
ディアッカの予想通りに、イザークは時間ピッタリに部屋にやって来た。
ノックがして、二コルが「空いてますよ」と答える。
扉が開くと皆一斉にイザークに向けてクラッカーを鳴らした。
「イザーク、誕生日おめでとう!」
突然の出来事に、何が起きたのかわからないという状態で突っ立っているイザークに向かって
口々にそう言った。
「なにボケッとしてんだよ! 今日の主役だろ。早く中に入れよ」
ラスティが強引にイザークの腕を引っ張って、部屋の中に招き入れた。
誕生日を祝ってもらえるなんて思ってもみなかったのだろう。
イザークはなお呆気に取られていた。
「これ、プレゼント。の提案で誕生日ケーキを作ったんだ。食べてくれ」
ディアッカがの机の上に置いてある、火の点いたろうそくが立てられたケーキを指差して言った。
それを見てさらに驚いた後、イザークは少し微笑んで「ありがとう」と呟いた。
その時ちょうどイザークと目が合ったは、これから起こる事を考えると素直に笑い返すことができなかった。
そうそくの火をイザークに消してもらい、部屋の明かりを点けるとがケーキ切り始めた。
狭い部屋なので、イザークにデスクチェアに座ってもらい、他のメンバーはと二コルのベッドに
それぞれ腰掛けていた。
イザークの分だけケーキを切り分け、二コルが入れたばかりの紅茶を添える。
皆の視線がイザークに集まった。
「さっ、イザーク。食べてくれ」
ラスティが待ちきれないという感じで、早く食べろと促す。
「ああ」
イザークはフォークでケーキを一口サイズに切ると、ゆっくりと口に運んだ。
皆は一斉に息を呑んだ。
次の瞬間―
「っっっ!!!!!」
イザークが急に顔を歪めた。
よく見ると、目尻に涙がにじんでいる。
ケーキに挟んだ真っ赤な生クリームには、韓国産の激辛唐辛子の粉末が混ざっている。
スプーン一杯分だけでも十分辛いのに、ラスティは小瓶の中の粉末を全部を入れてしまった。
その辛さはおそらく並大抵のものではないだろう。
彼はすぐさま横にあった紅茶に手を伸ばして一気に飲み干した。
しかし皮肉な事に、その紅茶には大量の塩が入れられていたため、イザークは見事にむせてしまった。
「っっ!!! ごほっ、ごほっごほっっ・・」
目を真っ赤にして、苦しそうに咳き込むイザーク。
傍から見ていると、なに一人芝居をしているんだろうと思うような光景に、ラスティはついに堪え切れなくなって
笑い出した。
「あっははははははははは!!!!!」
ラスティを皮切りに、ディアッカも溜まらず笑い出す。
二コルやアスランも、必死に笑いを堪えようとしながらも顔は笑っていた。
目の前で見ていたも気の毒に思う反面、つい口元が緩んでしまった。
やっと呼吸を整えて、事態を理解したイザークの顔色がみるみると変わり始めた。
「・・・っ、貴様ら〜〜〜〜〜」
「あっははははははは!! ははははははははっ!!! あ〜おかしい!! 見たかよ、今のイザークの顔!!!」
ラスティがお腹を抱えて笑いながら必死に訴えた。
「見た見た! カメラ持ってくればよかったよ。はっははははははは!!!」
ディアッカも以前として笑い転げていた。
二人の会話を聞いて、一段と怒りを露にしたイザークは、拳をわなわなと震わせていた。
その後、イザークが暴れだしたのは言うまでもないだろう。
イザーク誕生日記念小説です! 本当は当日(8日)にupしたかったんだケド、諸々の事情があって出来ませんでした(涙)
実はこの小説、書き上げるのに5日も掛かってたりして(^^;
なんか久しぶりに夢小説書いたから、どう書けばいいのかわからなく
なってしまいました。これだから文才のない奴は・・トホホ。
時間を掛けた割にはたいした文章じゃありませんが、楽しんでいただけたら
嬉しいです。
この話には後日談があって、イザークが5人に仕返しをします。
「母上から貰ったカルピスだ」とか言って、
米のとぎ汁を飲ませるというやつなんですが、時間が出来たらまた加筆修正しようと思います。
それでは最後になりましたが、読んで下さった皆様、本当にありがとうございました!