私が女である事をイザークに打ち明けてから10日の月日が流れた。

彼は約束通りこの事を黙っていてくれた。

私に対する態度も以前と変わらない。

ただあの日を境に、イザークが私に勝負を挑んでくる事はなくなった。

まあイザークの事だから、今まで女の私に負け続けていたのがよっぽどショックだったのだろう。

女に負けたという事実は、彼のプライドをひどく傷つけてしまったかもしれない。

そう考えれば、当然の行動だろう。

おかげで私の周りは急に静かになった。

毎日立て続けに勝負を挑まれていたのが嘘のようだ。

自分の時間を自由に使えるのがこんなに有意義な事なんだと思う反面、何かもの足りないような気がする。

イザークに勝負を挑まれる事にあんなにうんざりしていたのに、こうもパタッとなくなってしまうと 少し寂しくもあった。

心に小さな隙間ができてしまったような虚しさを感じてしまう自分がいる。

私はイザークに対して、今までとは違う特別な感情を抱き始めていた。

女である私を―という人間を―知ってくれている人がいる。

それだけで妙な安心感を覚える。

特に何かしてくれるわけでもないのに親近感を持ってしまう。

これがどういう感情なのか、今の私にはよくわからなかった。







その傍ら、この数日の間、彼に事実を話して良かったのだろうかと思うことが何度かあった。

復讐の為に軍人になると、男と偽ると決めた以上誰かに頼ってはいけない気がした。

自分が選んだことに誰かを巻き込んではいけない。

あの状況ではごまかしようもなかったが、全てをありのままに話さなくても良かったんじゃないか。

そう痛感したのは、ある日のシミュレーションの授業での事だった。























「今日のシミュレーションは一対一の対戦形式で行う。呼ばれた者同士、ペアになって 始めるように」

教官はそう言うと、次々と名前を呼んでいった。

「イザーク・ジュールと

急に自分とイザークの名前を呼ばれて私はひどく驚いた。

イザークとペア?

あの日以来まともに話していない事もあって、少し気まずいなと思った。

それに私はシミュレーションでイザークに勝った例がない。

元々ザフトに入隊するまでシミュレーションは経験した事がなかったのだ。

あまり慣れていないので私の苦手分野である。

きっと私が勝てないのをいいことにまた嫌味を言われるんだろうなと思いながらも、なぜだか嬉しさが込み上げてきた。









しかし―――――

「二コル、俺とペアを代わってくれないか?」

とイザークは私の隣にいた二コルに言った。

「えっ? でも教官の指示に従わないと・・」

二コルは困った表情を浮かべる。

「教官には俺から話しに行く。それならいいか?」

有無を言わせぬ言い方に、二コルは仕方なく頷いた。

「いいですけど。でも、どうして・・あっ、イザーク!」

イザークは返事だけ聞くと、二コルの言葉を最後まで耳に入れることなく真っ直ぐに教官の所に行ってしまった。





訳がわからなかった。

イザークは完全に私の存在を無視して話をしていた。

ペアを代わって欲しいということは、言い換えれば私とは勝負したくないということである。

いくら女の私と勝負したくないからといって、教官の指示に従わないようなことは 普段のイザークの行動からは考えられない。



その時初めて、自分はイザークに避けられているんじゃないかと思った。

よくよく考えてみれば、最近イザークは私と目が合っても以前のように睨み付けたりせずに 視線を逸らすようになった。

それは、まだ何となく気まずいせいだからだと思っていたのに・・・









「イザークと何かあったんですか?」

呆然と立ちすくんでいる私に二コルが声を掛ける。

「え? いや・・何もないけど・・・」

「そう言えば、最近イザークがに勝負を挑んでくることがなくなりましたよね」

「ああ・・」

「代わりにまたアスランが犠牲になってるんですケドね」

「え・・?」

初耳だった。

イザークがまたアスランに勝負を挑んでいる?

今まであんなに私に突っかかってきたのに、今はアスランに?

少し離れた位置にいるアスランを見ると、なぜかげっそりとした表情をしていた。

二コルの言葉が嘘でないと理解した瞬間、急に目の前が真っ暗になった。

かなりショックだった。



イザークに避けられている。



そうはっきりと自覚した。

どうして?

私が女だから?

今まで男だと思っていた人間が女だとわかった時、気まずくなるのは 仕方のないことだ。

逆の立場なら、私も同じだろう。

イザークが勝負を挑んでこなくなったのはそのせいだと思っていた。

私の事を少しはわかってくれたと信じていた。

すべてを話した後のイザークの言葉はとても優しくて、暖かかったから。

そう思っていたのは私だけだったのだ。

私が勝手に勘違いしてただけだった。

急に虚しさが押し寄せてきた。







戻ってきたイザークは二コルに許可を貰ったと報告すると、すぐにその場を離れていった。

その間、彼は一度も私を見ようとしなかった。

完全に無視だった。



一人取り残された私は、胸が締め付けられるような悲しみに襲われた。




































第6話です。やっとup出来ました、イザーク夢小説! 約3ヶ月振りです・・ね。本当にお待たせしました(汗)

やっと夢小説らしい展開に入ってきましたね〜。ここからヒロインはイザークを意識し始めるわけです。
次回は番外編っぽい感じでイザーク視点で話を進めようと思います。明日にはupするつもりです。

それでは最後になりましたが、読んで下さった皆様、本当にありがとうございました!









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