ザフト軍士官学校、アカデミーに入って早くも二ヶ月が過ぎようとしていた。

イザークは相変わらず私を避けている。

廊下で顔を合わせても、何かの拍子に目が合ったとしても、 何事もなかったかのように視線をそらされる。

その度に息が詰まり、胸が締め付けられるような感覚に襲われた。



イザークに話した事は間違いだった。

話さなければならない状況だったにせよ、他に方法があったかもしれないと思わずにはいられない。

彼を見る度に、自分がここにいる事が場違いだと言われているような気がした。

私を見る時のイザークの冷たい表情が脳裏に焼きついて離れない。

何とかしてそれを頭から追い払おうとした。

余計な事に煩わされている場合ではない。

私は復讐の為だけに、今ここにいるのだ。

目的を果たす事だけを考えればいいと何度も自分に言い聞かせた。

しかし、一人になると決まってイザークとのことばかりが頭の中に浮かんでは、私の思考を支配する。

そんな自分にうんざりしていた。























次の日のHR。

先生は、今まで思い悩んでいた事が一つ残らず吹き飛んでしまう程に私の頭が真っ白になるような事を口にした。

「今週の金曜日は二ヶ月に一度の健康診断を行う。 軍人はいつ、何が起きてもすぐに出撃できるように 万全な状態でいなければならない。その為には自分の身体についてよく知っておく必要がある。 全員しっかり体調を整えて臨むように。以上だ」

それだけ言うと、先生は教室を出て行った。









今・・・何て言った・・・・・?

健康診断・・・・・・・・?

嘘でしょ!?









その瞬間、身体の全機能が停止した。

身体がみるみる血の気を失って冷たくなっていくのがはっきりとわかる。

息をすることすら忘れていた。





健康診断なんて話は全く聞いた覚えがない。

私は何とか意識を取り戻し、平静装いながら隣の席にいる二コルに話し掛けた。

「二コル、健康診断のこと・・知ってたか?」

「ええ。アカデミーに入った時に貰ったマニュアルに書いてありましたよね。知らなかったんですか?」

少し驚いたように二コルが答える。

「あ・・ああ。ちゃんと読んだつもりだったんだけど・・・」

マニュアルに?

初日にすべて目を通したはずなのに、健康診断という単語を見た記憶はない。

「あのさ・・変な事聞くけど・・・」

こんな質問をして変に思われないだろうかと随分迷ったが、一番重要な事を確かめないわけにはいかない。

ためらいながらも、私は言葉を続けた。

「健康診断って・・・シャツは着てもいいんだよな?」

「確か上半身は何も身につけないはずでしたけど・・。何か問題でもあるんですか?」

「え?あ・・いや、俺って軟弱だから・・あんまり胸板とか見られたくないなと思って・・・」

上半身裸と聞いて内心気が気でなかったが、何とか笑ってごまかした。

「それを言うなら僕も同じですよ。でも、誰もそこまで見てないですから大丈夫ですよ」

私の思いは露知らず、二コルは安心させるように笑顔で言った。

ふと、前の席にいるイザークがこちらを見ているのに気がついた。

どうするつもりだと言わんばかりの表情を私に向けている。

私は居たたまれなくなって、イザークから故意に目を反らした。









大変な事に・・・なった。

シャツの着用が可能であれば、何とか切り抜けることができたかもしれない。

だが、上半身裸ではごまかし様がない。

何か打開策を考えなければ。

どんな手段を使ってでも・・・・・乗り切らなければならない。





























午前の授業はほとんど耳に入らなかった。

今は授業どころではない。

この日午後の授業がなかった私は、昼食も取らずに部屋に閉じこもって考えを巡らせた。









私はナチュラルに復讐することだけを考えて、男と偽ってまでザフト軍に入隊した。

たかが健康診断で正体がばれるなんてことはしたくない。

イザークにばれたとはいえ、やっとここまで来たのだ。

これで全員にばれてしまったら、今までしてきた事がすべて白紙に戻ってしまう。

例え今回の事で軍を辞めさせられたとしても、確かに復讐の方法は他にもあるだろう。

しかし、またさらに時間を要する。

戦争は今も現在進行中なのだ。

万が一プラントが敗北するような事になったら、復讐する事すら叶わない状況になるかもしれない。

この復讐を成し遂げるという目的を失ってしまったら、私はこれから何のために生きていけばいいのだろうか。

復讐という執念だけが私のすべての原動力なのだ。

それに縋っていなければ、私は生きていけない。

それ以外に生きる意味もない。

それだけは避けたい。

とりあえず、金曜日の健康診断は仮病を使ってやり過ごすそうと思った。

だが、欠席者だけに設けられる健康診断では同じ方法は通用しないだろう。

逆に変に思われるはずだ。

それに、休んだのが私だけという状況は考えにくい。

これでは結局ばれてしまう。

金曜日は上手く乗り切れたとしても、全く意味がない。

ならどうすればいい?



脳をフル回転させて知恵を絞り出そうとしていると、ふとある事を思い出した。

ザフトに入隊する時も健康診断書が必要だった。

男性用の診断書にする為には胸囲を修正するだけなのだが、それだけでも違法になる。

その時は祖父の知り合いの医師に頼み込んで、無理を承知で診断書を作成してもらったのだ。

祖父の知り合いの医師に掛け合ってもらうのはどうだろうと考えた。

でも、これ以上他人に頼っていては駄目だ。

自分自身で男と偽って軍人になると決めた以上、自分一人の力で何とかしなければならない。

こうなったら、方法は一つしかない。



医師に正直に事情を話してわかってもらうしかないだろう。

二ヶ月に一度健康診断があるという事は、また二ヵ月後にも同じような状況に陥るはずだ。

それならば始めから話しておいた方が無難である。

医師が一人の時を見計らって、話しに行くしかない。

一種の賭けだった。

万一、取り合ってもらえなかったら――――――

その時はお金の力を借りるか、何らかの形で脅しをかけるしかないだろう。

最悪の場合は・・・極端な話だが、口封じする事もありうる。

出来ればこんな事はしたくない。

でも、復讐を諦める事は絶対にできない。









復讐の為なら、何でもすると誓った。

多少の事で躊躇しているわけにはいかない。

例えそれが、どんなに汚い事や・・・人殺しだとしても。

ナチュラルに復讐する事自体が人殺しなのだから、今さらためらう事はない。



やるしかないのだ。



そう自分の心に深く刻み込んだ。




































第7話です。ヒロインかなり焦ってます。『殺す』だなんて怖い事言ってますよ〜!!(笑)
ちょっと極端すぎるかなと書いてる自分でも思ったんですケド、 ヒロインはそれだけの決意で復讐に臨んでいるという事を表現したくて。 でも、結局表現しきれてないですね・・・トホホ。ホント文才なくて困ります(涙)
後編は明日upするつもりです。

それでは最後になりましたが、読んで下さった皆様、本当にありがとうございました!









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