どれくらいの間そうしていただろうか。

そこまで考えを巡らせたところで、誰かに名前を呼ばれている事に初めて気がついた。

我に返って顔を上げると、イザークの顔が目の前にあった。

「え・・?イザー・・・ク?」

焦点の定まらない瞳でぼんやりとイザークを見つめると、彼は呆れたように口を開いた。

「ドアをノックしても何度呼んでも返事がないから、勝手に部屋に入らせてもらった」

私は部屋に戻ってからずっと考え込んでいたのか。

「そうか・・悪い」

再び目線を机に戻して答えた。

イザークに正体がばれたとはいえ、敢えて男言葉を使った。









イザークは何しに来たのだろうか?

どうするつもりかと様子を見に来たのか・・・。

今まで散々私の事を避けていたのに都合がいいなという思いが一瞬脳裏を掠めたが、 今はそんなことはどうでもいい。

適当に相手をして帰ってもらおう。

イザークと話をしている暇はない。

私には考えなければいけない事が山ほどあるのだ。









「どうするつもりだ?」

突如イザークが口を開いた。

「何をだ?」

私はわざととぼけてみせた。

すると、彼は静かに言い放った。

「健康診断の事だ」

イザークの言わんとすることはわかっていた。

彼は私が女である事を知っているから。



この健康診断で何か異変が起きれば、イザークは必ず私を疑うだろう。

一つだけ、確認しておく必要があった。

「俺がどんな事をしても、イザークは黙っていてくれるか?」

私の思い詰めた表情に、何をするつもりだとでも言いたげに彼は眉を顰めた。

「一応そのつもりだが、状況にもよる」

「そうか・・・」



もし最悪の事態に―――医師の口を封じる事になったとしても、イザークは黙っていてくれるだろうか。

いや、おそらくそれはないだろう。

ならばどうする?

イザークも同じように脅すのか?

それとも―――――



























「貴様は自分の事よりも復讐の方が大切なのか?」

予期せぬイザークの問いに、一瞬何を言われたのかわからなかった。

どうしてそんな事を聞くのだろうかと不思議に思いながらも、私は正直に答えた。

「私にとって、復讐する事が生きる目的だから。私はそれだけの為に生きてるの」

イザークは黙って私を見つめていた。

そして、しばらくしてポツリと呟いた。

「よっぽど家族のことを愛していたんだな」

彼は二コルのベッドに腰を下ろすと、机の前にある窓の外に目を向けて言葉を続けた。

「俺は母上が殺されたとしても、多分そこまではしない」

そう言って、またしばらくの間黙り込んだ。







イザークは何を言おうとしているのだろうか?

私には理解できなかった。

無言でイザークに視線を向けていると、急にこちらを見た彼と目が合った。

イザークはいつもと違って、私から目を逸らさなかった。

「俺が何とかしてやろうか?」

「え・・?」













―何とかしてやろうか?―













幻聴かと思った。

自分の耳に入った言葉が信じられなかった。

だが、イザークは真剣な表情で私を見ている。

今言ったことが嘘ではない証拠だ。



「健康診断に来る医師は俺の家の主治医だ」

イザークは言った。

「評議員の奴らはほどんどこの医師に診てもらっている。ザフト軍お抱えの名医だからな。俺が貴様の事情を話して頼んでやってもいい」

イザークの言葉だとは思えなかった。

どうしてそんなことを言うのか、その意図が全くつかめない。

「俺で無理なら母上に頼んでやってもいいだろう。仮にも貴様の父と兄はザフト軍だったんだ。多少は貴様の意を組んでくれるだろう」

私は呆然とイザークを見つめていた。

言われた事をすぐに理解できなかった。









どれくらいの時間が過ぎただろうか。

やっとのことで私は口を開いた。

「・・・どうし・・て・・・・・?」

わからない。

なぜイザークはそこまでしてくれるのだろうか?

嬉しいとかそういう感情よりも先に、そう呟いていた。

「・・貴様がいなくなると、困るからな」

「え?」

イザークの声は小さくて聞き取れなかった。

もう一度聞くと、

「貴様には借りを返さないといけないからな。女に負けたままでは俺のプライドが許さない」

と、なぜか頬を少し赤くして言った。

「じゃあ、どうして今まで私を避けてたの?」

私はイザークに一番聞きたかった事を口にした。

彼は私から目を逸らすと、俯むきながら答えた。

「今まで男だと思ってた奴が女だと知ってすぐに割り切れるほど、俺も出来た人間じゃない」

「そっか」

当然の答えだと思った。



「で、どうするんだ?」

イザークは話を元に戻して私の返事を促した。

「お願いしても・・いいかな?」

「わかった。これ以上妙な事をされても困るからな」

そう言うと、用はそれだけだというようにイザークは部屋を出て行った。

「ありがとう」

素直にそう呟いていた。

今までの葛藤が嘘のように、心が晴れ渡っていた。

































私は気がついてしまった。

イザークに対する特別な感情が何なのか。

避けられた事にショックを受けていたのはそのせいだったのだ。

イザークに嫌われるのが・・・怖かった。

イザークの事が




















―好きだから―




































第8話です。やっとここまで来ました!! ヒロインがイザークを好きだって気付きましたね。 まぁ、ここまでしてくれちゃったら誰だって惚れるでしょう(笑) そうでなくてもイザークはカッコいいですからね〜v(爆)
続きは来月に更新するつもりです。この前のように三ヶ月も間が空く事だけはしないように努力します(←何回そう言ってるんだか・・)

それでは最後になりましたが、読んで下さった皆様、本当にありがとうございました!









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